第27話

里美と由香はカラオケボックスへと向かった。


歌うためではない。


誰にも見られることなく、携帯彼氏について話す場所が欲しかったからだ。


里美も由香も実家住まいなので、どちらかの家に行く訳にもいかなかった。


明らかに喪服とわかる出で立ちに、カラオケボックスの店員が不思議そうな表情を浮かべる。


里美と由香は、店員の視線を尻目にかまわず告げられた部屋番号へと向かった。


部屋に入って早々に、里美は真由美の携帯電話を開いた。


「どうすればいいと思う?」


里美の問いに、由香はしばらくの間黙り込んだ。


「そうだ! 赤外線通信すればいいのかも」


由香が真由美の携帯電話と自分の携帯電話を近づけ、両方を上手く操作する。


「だめ。エラーになった」


由香はため息とともにかぶりを振った。


赤外線通信もだめとなると、一体どうすればいいのか。


本来楽しげな歌声で満ちるはずの部屋は、二人のため息しか聞こえないほど静かだった。

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