第25話

「九条課長、おはようございます。」



自分のデスクの近くに座る、既に仕事を始めている課長に挨拶をする。



「ああ、おはよう。あ、桜木、明後日のセミナー、内の課から行く事になったから、お前とあと一人誰か部下を選出しててくれ。」


「分かりました。」



…ああ、面倒くさい。


商品企画部は全部で三課まであるのに、なんで今回も一課から?


確かに勉強にはなるけれど、本音を言えば今進めている企画に打ち込みたい。


小さく課長にバレないように溜息を吐きつつ、私の部下である藤森が提出している企画書に目を通す。



九条課長も、私同様まだ32歳という若さで課長に昇進した仕事の出来る人だ。


…まぁ、私と違ってイケメンで、仕事の教え方も上手いので社内でもかなりの人気を誇る人だけれど。主に女性社員の。


私も上に立つ人間として、九条課長を見習わなきゃな、とは思うけれど、


…やっぱりダメだ。



「藤森っ!!ちょっとこっち来て!!アンタ企画舐めてんの!?」



私の叫び声を聞いて、藤森が飛び上がらん勢いで椅子から立ち上がってこっちに走ってくる。

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