第29話
ももさんは高校に入ってバスケを続けるつもりはなかったと笑ったけど
私と違って中学時代の彼女はキャプテンを任されるくらい実力のある選手だった。
バスケが上手なのはもちろん
スタイルがよくて美人で、ももさんは部内でもみんなの憧れの存在だった。
見た目も抜群だったけど
自信と愛嬌に溢れるももさんは、誰にでも分け隔てなく接することができる。
ももさんの笑顔は、人の心を魅了する強い力を持っていた。
気まぐれににっこり笑いかけられて、ももさんに密かに想いを寄せる男子部員が何人もいたことを私は知っている。
―――夏向さん、も
いつもこっそりももさんのことを盗み見ていたことも、目で追うようになってすぐに分かった。
さっきのももさん
それから、一緒にいたサッカー部員の男の人
仲良く肩を寄せ合う2人の姿が頭の隅をちらついて、私は思わず俯いてしまう。
見られたかな。
……見られてないといいな。
黙り込んだままそう弱く祈る私に
夏向さんは小さく息を吐く。
「そんなことどうでもいいからさっさと戻るぞ」
もたもたする私に見限りをつけたように
ついに歩調を早めて、先に夏向さんは体育館へ戻ってしまう。
それを追うように自分なりに全力のペースで残りのサーバーも運び終えると、練習が再開したのを見計らって私は再びこっそり体育館を後にした。
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