第26話
「っ、」
どう応えればいいか分からず思わず無意識に俯いてしまう私に
ももさんはもう一度微笑んでサッカー部の男性と手を繋いでどこかへ行ってしまう。
2人の姿をしばらく見送ってから
私は大きく息を吐き出すと満タンになったサーバーの蓋を閉めて、そのうちの2つをどうにか持ち上げる。
予想外の重量に足元がついよろけるけど、どうにか転ばないようにその場で踏んばる。
ジャーを全部持ってきてしまった。
早く体育館へ戻らないときっと部員が困ってしまう。
今日のマネは私1人しかいない。
……頑張るしかない。
よたよた歩きのまま
そう気合いを入れ直して顔を上げた、その時。
「―――」
ふと両腕が一瞬で軽くなって
私は驚いて勢いよく顔を上げる。
運ぶのに必死で気付かなかった。
だけど、いつの間にか体育館から出てきていたらしい―――夏向さんが私を無表情のまま黙って見下ろしていた。
「夏、向さん」
うわごとみたいに名前を呼んで
無意識にまだ遠くに見えているももさんの背中をちらりと見てしまう。
いつからいた?
……もしかして、見られていた?
つい言葉を失う私を一瞥して
夏向さんは両手にサーバーをぶら下げたまま気にする素振りなく先に体育館へ戻ろうとする。
背中を向けられてついはっとした私は
慌てて夏向さんを追いかけるとその腕から再びサーバーを取り上げようともがく。
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