第25話

「あんなに頑張ってアピールしてるんだもん。早く振り向いてもらえるといいね」



そう無邪気に笑うももさんを見つめたまま、何も言い返せない私はただ黙り込んでしまう。


顔を寄せてくるももさんから

ふとお花みたいな甘くていい香りがする。


普段ならそんなこと気にしないのに

髪もぼさぼさで汗臭い自分が不意になんだか酷く惨めになる。


ももさんはきっと

“全部”分かってる。


私の気持ちも

それから、夏向さんの気持ちも。



だけど、私には分からない。



早く振り向いてもらえるといいね。

―――一体どんな気持ちで、それをあなたが言うのか。

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