第30話
そんな風にR指定の言葉が飛び交う中、再びプリンスのブリザードが吹き荒れそうになった…その時。
部屋の空気を変えたのはそれまで沈黙を貫いていた人物、異国からの留学生だった。
『――…隆義、聡一郎。
取り込み中の所悪いが、そろそろ私に彼を紹介してくれてもいいんじゃないか?』
流れるような異国の言葉に三方向から視線が集まる。
バ会長の隣、つまり俺の向かいのソファーに座っているのはスーツ姿の外人さんで。
少し癖っ毛の黒髪に彫りの深い顔、切れ長の涼やかな目が真っ直ぐと俺を見据えていた。
思わず背筋がピンとなる。
何つーか、バ会長がライオンなら隣の留学生は黒豹みたいな印象を受ける。
この男が美里の…婚約者。
『そっちの学園にも噂ぐれぇいってんだろ、【鈴蘭】に初の外部生が入ってきたってよぉ。』
『…ああ、コレがそうなのか。』
『コレじゃない、黒崎 誠君だ。今学期から生徒会で会長補佐をしてもらってるんだ。』
「……」
え、ちょっと待って。
全員が全員日本語じゃない言葉話し始めたんだけど。
え、つか何語?
英語、じゃねぇよな。
え、何語?
確か留学生って中東の王族だって話だったような……つー事はアラビア語とか、か?
いや何にしても分からねぇ事に変わりはねぇんだけども。
日本なら日本語話せと声を大にして言いたいのは俺だけじゃないと思う。うん。
「黒崎君、彼はアシュメニア王国の第二王子でシャリーフ・イブン・サアド・アル=アシュメニア。
もう知ってると思うけど、月岡の婚約者だよ。」
「…どうも、初めまして。」
一人ちんぷんかんぷんで取り残されていた俺に、プリンスが日本語で留学生を紹介してくれた。
未だ崩せぬ正座のまま身体の向きだけ変えてぺこりとお辞儀。
伝わるか分かんねぇけど一応日本語でご挨拶。
取りあえずごめんなさい、名前全部覚える自信ありませんゴメンナサイ。
『……』
ジッと、漆黒の瞳が上から下まで無遠慮に俺を見つめる。
…うん、正直ちょっと居心地悪いんですが。
そんな見られても何も出ないんですが。
つーか今までサラリと流してたけど、王族なんだよなこの人。
俺リアル王子様初めて見たんだけど。
すごいね、何か。
どことなく気品漂う感じとか。
プライド高そうな眼差しとか。
んでもってそのリアル王子様に全く引けを取ってないバ会長のカリスマオーラとか。
つか二人とも手足長すぎだし。
べっ別に羨ましくなんかねぇんだぞコンチクショウ。
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