第29話
ローテーブルを挟んでプリンスの向かい、つまり俺の斜め向かいに座る男を思わず恨めしげにじっとりと見やる。
俺の視線に気付いたバ会長は、煙草をくわえたままニヤリと口角を上げた。
そんな姿も絵になるとか納得がいかない。
性格の悪さが顔に反映されないなんて納得がいかない。
むっすー。
「…隆義も黒崎君を困らせるのは止めろ、彼だって暇じゃないんだぞ。」
と、そんな俺の視線にプリンスも気付いたようで、ため息混じりにバ会長に注意を促してくれた。
プリンスのお説教は俺を心配してくれてるが故だから、それ自体は別に嫌じゃないんだけど。
ようやくその矛先がバ会長へと向き、俺はぴょこんと気持ちが浮上した。
うんうんうんうんと、声には出さず何度も頷きプリンスに賛同。
いいぞプリンスもっと言っちゃって!と心ん中でエールを送る。
が、しかし…
「たかが男の膝の一つや二つ、減るもんじゃねぇだろうが。
別に『ピー』開発してグチャグチャに『ピー』しまくって、口で『ピー』させたわけじゃねぇんだからよぉ。」
――シュバッ!!!
「ふおっ!?」
ふてぶてしくバ会長が口を開いたその時、プリンスの両手が目にも止まらぬ速さで俺の両耳を塞いだ。
びっくりして思わず変な声が。
耳を塞がれたのになぜか目がチカチカする。
多分プリンスは、俺が女だって事を知ってるから有害なバ会長の言葉から守ろうとしてくれたんだろう。
けどゴメンそーちゃん。
ほとんど聞こえちゃった。
伏せ字の部分はほぼ意味分かんなかったけど、バ会長がかなり下品な事言ってんの聞こえちゃった。
「テメェ隆義、いい加減にしろよ…!」
……、ん?
プリンスの手の隙間から耳に入ってきた、地を這うような低い声に目をパチクリ。
間近にあったのは、額に青筋を浮かべながらバ会長を睨んでる眼鏡男子君の顔で。
え、もしかしなくても今のプリンスのセリフですか。
微笑みの王子の口からテメェとか、初めて聞いたんだけど。
いやもう一枚猫被ってるってのは知ってたけどさ。
こうも印象が変わるとは思わなんだ。
どうしよコレ。
プリンスは俺の耳を塞ぎきってるつもりみたいだし、聞こえてない振りした方がいいかな。うーん。
「あ?さっきから何目くじら立ててやがんだ聡一郎。
別に『ピー』や『ピー』ぐれぇ今時童貞でも知ってる事だろおが、なぁ黒頭。」
「隆義!」
「……」
うん、聞こえない聞こえない。
ナニモキコエナイよ俺は。
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