第27話

ぺちぺちぺちぺち。


なかなか俺の太ももを解放しないバ会長の額を、嫌がらせ混じりに叩き続ける俺。



広い室内に二人きり。


革張りのソファーに横になってる【鈴蘭】の王様に、その枕になってるモッサリオタクな外部生。



もはやそれを日常として受け入れてる自分が怖い。

慣れって怖い。





(んー…書類に不備はねぇなっと。うっし、最終チェック完了。)




あとは風紀室行って、ノエルちゃんのサインもらったら終わりだな。



今日一緒に帰れるかな…?


冷蔵庫空っぽだからコンビニ行って食材買い溜めしたいんだけど。



多分トキも飯食いに来るだろうからアイツにも手伝ってもらおっと。


言わずもがな二人とも荷物持ち要員です。

ちなみに今日の晩御飯はとんこつラーメンです決定事項です。



つーわけで…





「早くスーツに着替えちゃって下さい時間ないッスよ、桐原先輩に怒られちゃいますよ。」



「…随分聡一郎に懐いてやがんな、黒頭。」



「アンタと違って優しいし仕事サボんねぇし面倒見いいからね、純粋に先輩として尊敬してるんスよ。


エセプリンスなのも先輩の魅力の一つなんじゃねぇかって思えるぐらいには。」



「何だエセプリンスって。」




クツクツと声を震わせ笑う会長サマ。

頭を預けたまま動こうともしやがらねぇ。


すでに太ももを占領されてから二時間経過。

そろそろ俺の足も限界なんだけど。



…まさかこれを狙って俺を補佐にしたんじゃねぇだろうなコイツ。


わざと仕事しねぇで俺が膝枕提供すんの待ってたんじゃねぇだろうなコイツ。



自分の太ももにんな価値があるとは思わねぇけど、あり得ないと言い切れないのはなぜでしょう。


いっそバ会長の身体ごとぺい!ってしてやろうかと、物騒な事を考え始めた…その時だった。





――ガチャ…




『隆義、時間だぞ。』




ソファー正面にある扉が開き、一節の異国の言葉が舞い込んできたのは…。



パッチリと。


最初に部屋に入ってきた人物と目が合う。



褐色の肌に漆黒の髪。


今まで何度か遠目に見た事があるその姿は、今週初めに来日したっつーSクラスの留学生で。





(この人、美里の…)




んな風に突然の来客に内心驚きつつも。


目ぇ合ったんだしお辞儀ぐらいした方がいいよなと、俺は軽く頭を下げようとした



が、次の瞬間――






「…二人とも何をしてるのかな?」





続いて部屋に入ってきた人物。


微笑みの王子ことプリンス桐原の極寒ブリザードが吹き荒れたのでした。

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