金髪男

第29話

振り返るとそこにあったのは、でっけぇ厳ついバイク。


そしてそれに跨(マタガ)った、金髪でロン毛の男…





「あはっ、あはははは!ひーひーっ!はっ腹いて…ハ、腹痛ぇっ!ハハハっごほ、かはっ!」




が、腹抱えて笑ってるとこだった。


涙目になりながらこっちを指差し、爆笑する派手な金髪の男。



あ?誰だコイツ?


前に集中してて、バイクが来たなんて全然気付かなかった。



しかも振り返ったらすでに爆笑中って。

何でこんな笑ってんだコイツ。


つーか人に指差すな指を。



…ん?これって俺が笑われてんのか?


俺がそんな事を疑問に思ってる間にも、金髪男の爆笑は続き…





「ははっ、っがは、ごほごほゴホッ!」




ああもう、笑い過ぎて咽(ム)せてんじゃん。


咽せる率の方が多くなってんじゃん、ったく。



そんな窒息寸前の男を見殺しにするわけにもいかず、俺は仕方なく近付くとソイツの背中を擦ってやったのだった。





「ごふっゴホッ、ごほっ…。っわ、悪ぃ。」



「いや…どこの誰かは知らねぇが、酸欠になるくれぇ面白いモンに出会えて良かったなアンタ。


人間んなに爆笑できるなんて事そうそうねぇぜ、おめでとさん。」




なかなかねぇぜ、人間がここまで爆笑する事。


まぁ何がそんなに面白かったのか、俺には全く分からなかったけどさ。



一応キョロキョロと辺りを見回すも、やっぱり俺とこの金髪男以外誰も居なくて。


やっぱ指差されてたのって俺か?と、内心首を傾げていれば…





「ぶあっはっはっはっはっはっ!!!」




俺のセリフを聞いた金髪男が更に爆笑してしまったのだった。


…何でだ?



それから咽せたら背中を擦ってあげるってのを、何度か繰り返したんだけど。


俺が声をかける度に、なぜかまた笑い出す金髪男。





「たっ、頼むから…!しゃ、喋んないでくれ…っ!」




うん、分かった。


お口チャックな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る