開かずの門
第28話
すげぇよ門でこの高さって。
左右に連なる石の塀も、言うまでもなく門と同等の高さ。
刑務所っつーか、外国の昔の城の外壁みたい。
見た事ねぇけどさ、イメージ的に。
さらさらと桜の花びらが夕焼けに舞う中、しばし俺はその絶壁を呆然としながら眺めていた。
んだけど…
「てかこの門、どやって開けんだ?」
そう、今はそれが問題。
辺りを見渡してもやっぱり人気はなく、守衛さんも居なさそう。
取りあえず、両手で柵状のその門をガシャガシャと押したり引いたりしてみる。
…うん、ビクともしない。
柵の間は身体引っ掛かってさすがに通れないし、上り棒の要領でよじ登るにしてもこの高さは未経験で自信ない。
…え、マジでどうしよコレ。
「つーかここまで上らせといて開かねぇって、どういう事だコラテメェ。」
ピキリと額に青筋が。
こんな長ぇ坂道を一時間半近く上らせといて入場拒否するとか喧嘩売ってんのかコノヤロウ、と。
ここまでの疲れも相俟って、今度は坂道から無機質な門相手にキレそうになる俺。
イライライライラ。
早く自分の寮室に入って休みたいっつーフラストレーションが、ここにきて急上昇。
「おうおう、そっちがその気ならこっちにだって考えがあるんだぜコラ。」
フッと不敵な笑みを浮かべた俺は、旅行用バッグを地べたに置くと。
両足を肩幅に広げて両脇を締め、ゆっくりと深呼吸をし始めた。
すぅー、はぁー。
すぅー、はぁー。
気合いを十分入れて、腹に力を込める。
息を思いっ切り吸って、いっくぜ。
せーの!
「開けえええいごまあああ!!!」
ヤンキー同士の喧嘩宜しく、巻き舌全開。
魔法の言葉を、叫び唱えたのだった。
――シーン…
…ああ?
何で開かねぇんだテメェコラ。
うんともすんとも言わない鉄柵の門を睨み付け、首を傾げる俺。
魔法の呪文だぜ。
三鷹さん直伝の、何でも開いちゃう呪文なんだぜ。
テメェ三鷹さんに逆らうってのか、いい度胸じゃねぇかコラ。
それとも俺の気合いが足りなくて失敗したのかと、そんな事を考えていた。
…と、その時だった。
「ブハッ!」
「…あ?」
背後から、誰かが吹き出す声が聞こえたのは。
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