第27話

――――……





「…ああ?何だよ、居ねぇじゃねぇか。」




バイクを飛ばして、学園がある山の麓のバス停に着いたはいいものの。


周りを見渡しても誰も居らず、ただ桜の花びらが夕日に染まって舞うばかり。



理事長から連絡を受けたのが、一時間近く前だ。


外部生がまだ到着してねぇって事は、ないと思うんだが…。





「…もしかして、歩いて上ってったのか?」




そう独り言を呟いた俺が見上げたのは、【鈴蘭】へと真っ直ぐ続く桜並木の登り道。


ハハ、んなわけねぇか。



この学園の生徒は運転手付きの車で行き来をするのがほとんどで、まれに学園が所有する送迎バスを利用する奴はいるが。


麓から歩いて山頂に行ったヤツなんざ、見た事も聞いた事もねぇ。



噂じゃ徒歩で片道ニ時間以上かかるって言われている、地獄の上り坂だ。


例えそれを知らずとも延々と続くこの坂を見て、んな無謀な挑戦しようなんて思う馬鹿はいねぇよ。ハハハ。





「……」




いねぇ、よな?



















「ぶぇっくしょんっ!」




んー…鼻がムジュムジュする。



誰かが俺の噂してんのかな?


それともまさか、花粉症か?





誠 side




ハイハイこちら、焼き鳥ん中じゃ軟骨が一番大好き。


黒崎 誠でありまっす。



あれから更に歩きに歩いて三十分、俺はただ今大きな壁にぶつかっておりました。



ほんっとに大きな…





「…ここが入り口でいいんだ、よな?」




鉄柵の正門。


一体ビル何階建ての高さあんだよっつーくらい、巨大な門。



学校の正門って普通あれじゃねぇの。

精々高さ数メートルくらいじゃねぇの。



なにこの絶壁の30めーとぅ。


いや多分実際はそこまでないのかもだけど。

体感的にそれくらい高そうって意味で。

見上げる角度が急過ぎて首が痛いんだけど。




鈴蘭学園って、


刑務所じゃねぇよな…?

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