第26話

??? side





『奨学生が麓に着いてるはずだから、拾って連れて来てあげてくれるかしら。』




外の用事を済ませ、学園にバイクで帰る途中の事だった。


今年就任した新理事長から、そう携帯に連絡があったのは。



あの人とは『家』絡みのパーティーでよく顔を合わせていた事もあり、今回理事長になるに当たりこうしたお願いをすでに何度か頼まれていた。





(…美人なのに人使い荒ぇとこが玉にキズだよな、あの人。)




そんな風に多少面倒臭く思いつつも、最近鈴蘭生の間で話題の的となっている『噂の外部生』とやらに、少なからず興味があった。




鈴蘭学園の入学試験は、一般的な高校の入試とはかなり異なる。


基本的に【鈴蘭】は、三つの附属中学校からしか生徒を取らねぇからだ。



つまり【鈴蘭】に入る為には、その三校どれかの卒業生でなければならねぇっつー条件がある。


だが仮に金に物を言わせていずれかの中学校に入学・卒業できたとしても、全員が全員エスカレーター式に【鈴蘭】に入学出来るわけじゃねぇ。



鈴蘭生になる為には、『鈴蘭選抜試験』という名の入試にパスしなきゃならねぇ。


その試験に合格した者だけが、晴れて鈴蘭学園に入学できる。

落ちた者は言わずもがな、中学三年間の学費や寄付金が全て水の泡。



まさに勝ち組と負け組に分かれるという訳だ。


つまりはエリートの中のエリートだけが入ることを許された学校、それが『鈴蘭学園』だ。




そんな中、今年から突然設けられた奨学生制度。


附属中学の卒業生が受ける『鈴蘭選抜試験』よりも、遥かに難関と噂の奨学生試験をパスした一般生。



つまりは【鈴蘭】初の『外部生』が、この学園にやって来るってわけだ。





「…一体どんな天才なんだか。」




ヘルメットの奥でそう呟いた俺は、バイクのスピードを上げると【鈴蘭】の山麓へと道を急いだのだった。

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