第30話

『─…お邪魔しますっ』



「そんな畏まらなくても、誰も居ないよ?」




一人暮らしの凛くんのお部屋に二人で帰ってきてすぐに、凛くんが楽しそうに笑った。





「柚ちゃんって、ほんといい子だね。そういうところ…凄く好きだよ」





って─…不意打ちの"好き"はズルいです!





「……あ。赤くなってる─…照れてるの?」





凛くんのこういうところ、ほんとズルいなぁって思う。色んな知識は頭に入っていても、女心というジャンルはスルーして生きてきたらしい彼は本当に鈍感すぎて困る。





分からないこと、気になることがあれば容赦なく言葉にして何でも聞いてくる。照れているのか…なんて、いちいち聞かなくても分かるでしょ?!ていうか、察して!





『─…凛くん、メガネ外していいよ』



「ん?んー…外すと見えなくなっちゃうけど」



『見えなくていーよ。いま一緒に居るのは私だけだから、凛くんの素顔が見たい─…お願い』





お願い…っと言って手を合わせて凛くんを見上げれば、今度は彼が顔を赤くして慌てて私から目をそらす





───かわいーかよ。

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