第31話

男はわたしの背中に手を回して、手錠を外していたようだ。


男の体がわたしから離れると同時に、両腕が久々に開放されて体が楽になる。


ただずっと後ろに両手を回した状態だったため、両肩がキリキリと傷んだ。






男は今度は腰にぶら下げた様々な鍵の中から別の鍵を取り出し、両足の手錠も外してくれた。


体がスッと軽くなり、気分まで少し晴れやかになる。







男はその作業を終えると、じっとまた、食い入るようにわたしを見つめた。







深い、灰色の。


まるで生気を感じない。


だけど、どこかしら悲しげな眼差し──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る