交渉

第26話

────

──



徐に、ギィィ…と入り口の扉の開く音がした。


ただ壁にもたれ呆然としていたわたしは、その音で我に返った。







ヒヤマが出て行ってから、大分時間が経った気がする。







開いた扉からは、初めて見る男が入って来た。


がっしりとした体格に、髭面、アーミーパンツを履いている。


年は、30歳前後といったところか──牢屋の前まで足を運ぶと、格子の隙間から何かを入れて来た。


それは、プラスチック製の容器に入ったお弁当だった。


炊き込みのおにぎりに唐揚げなんかも入っていて、値札が貼ってある。


買ったことはないけど、恐らくスーパーやコンビニで売っている簡単なお弁当だった。







男は格子の隙間から縦にするようにお弁当を入れると、わたし側の床に置いた。


続けて、ミネラルウォーターのペットボトルも入れてくる。


わたしは男が作業をする様を、微動だにせずに黙って見ていた。

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