第32話

「ああ~、中田か。」


そこでカレーパンを頬張りながら、ユイが呑気な声を出した。


「気になるの、わかるかも。彼なんか独特だよね。」


「うん。いつもああやって座って教科書見てて、人と話してるの見たことないし。」


ユリナが、中田くんに目線を送りながら言葉を発する。


「そうだよねえ。──あっ、でもわたし、D組の木村くんがこの教室に来て中田と話してるのみたことあるよ!」


ユイが思い出したように言うと、驚いたわたしとユリナの声がほぼ同時に重なった。






「木村くんって、あの目立つ人!?」


「金髪の木村くん!?」







ユイは頷くと、紙パックのカフェオレを啜りながら言った。


「わたしもびっくりしたよ、だって中田と木村くんて全然合いそうにないんだもん。中田って綺麗な顔してるけど、なんか地味でダサいよね。暗そうだし。


あとさ、中田ってすっごい頭悪いらしいよ、噂によると。」


「何それ、ウケるんだけど!休み返上で教科書ばっかり見てるのに?」


ぎゃはは、とユリナが笑った。






「うん、それにね、中田の下の名前知ってる?」


「下の名前?」


わたしは思わずユイに聞いた。


ユイは頷いてから、こう言ったんだ。

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