第28話

人通りが少ないのに、たまに時々酔っ払いだとか物騒な人がいることもあるから、わたしは身を縮め、足早に道を歩いた。






駅前の小さな噴水は、もう夕方みたいに水を吹き上げてはいなかった。


白いタイル張りの円い池の中で、静かに風に揺れている透明な水。


水面に、ゆらゆらと外灯の明かりが映っている。


わたしはふと足を止め、誰も座っていないその噴水を眺めた。







───あの人は、もう二度と来ないんだろうか。


薄い、グレーのパーカー。









普通の女子高生でいることは、諦めた。


普通の高校生活を送ることも、諦めた。


夢中になっていた『あること』だって、諦めた。






────だけど、あの人に会いたくて。


それだけは諦められなくて。


気付けばすがるように、あのカフェでバイトを始めていたんだ。


あの人がもう一度来るかもしれない、この噴水の側で。

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