第27話

「アゲハちゃん、今日はもう帰っていいよ。」





今日は平日だしお客さんも少なくて、窓際で長くコーヒーを一人飲んでいたサラリーマンらしきお客さんが帰ったところで、店長が声を掛けて来た。


店長は、いつもわたしを少し早く帰してくれる。


あまり夜遅いと危ないからと、わたしの身を心配して。


それでも、お給料はちゃんと時間分くれる。


申し訳ない気持ちもあるけど、店長には本当に感謝している。


この店をバイト先に選んで、本当に良かったと思う。







再び制服に着替え店長に挨拶を済ませると、わたしは少し閑散とし始めた駅前の道に出て行った。


5月とはいっても、夜の空気は少しひんやりとした風が入り混じっている。


この辺りは少し行けば住宅街が多く、繁華街としてはそんなに栄えている駅じゃないから、この時間帯になると歩く人もまばらでどこかもの悲しいかんじがする。

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