第35話
私は混乱の中にいた。
……えっと、屋根の上から人が降ってきて、首を絞められて、もう死ぬんだなあと思っていたら、新が男を組み敷いていた。
そもそも、砂糖を吐きつづける紳士の新が人を簡単に制圧してしまうなんて、想像もしていなかった。こっちの方がよっぽどやばいギャップじゃん。私が戸惑うのも無理はないと思う。
新は私の肩にダウンジャケットをかけてから、組み敷く男の前襟を掴み上げ、目にも留まらぬ速さでこめかみを殴りつける。男は即座に失神した。
うわあ……瞬殺じゃん……。
開いた口が塞がらない。この人は本当に、あの新なの?他人の空似じゃなくて?本当に?にわかには信じ難くて、自問を繰り返してしまう。
新は脱力した男の体を乱暴に放り投げる。あまりに雑な扱いに、ちょっとだけ憐れんでしまった。
男の上半身の服を中途半端に脱がせて、袖を後ろでぎゅっと縛ってから、私の方へと振り返る。新の顔はいつもと変わらず、柔和な笑みを浮かべていた。
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