第11話

くねくねと曲がる坂道を歩いていく。旅館らしき建物を見つけてもみんな廃墟になっていて、そもそも人の気配が全くしない。

 


……嫌な予感がした。もしかしたら、歩く道を間違えたかもしれない。

 

 

山の中から獣の不気味な鳴き声が聞こえると、ダウンジャケットの中に押し込んだはずの尻尾がくるりと足の間に巻きついてくる。チューリップハットの中の三角耳はペタンと平らに伏せていた。



猫の体のパーツは正直者で嫌になる。考えないようにしていたのに、私が恐怖を感じていることを意識してしまう。



 

「なんで私、こんな目にあってるんだろ」

 



だって、私は何も悪いことはしていない。静かに暮らせたらそれでいいと思っている。


半分はもう諦めているけど、やっぱり不満は感じる。普通ではないってだけで、私は殺されないといけないってことでしょ?


 

……もう、全部が嫌だ。

 


じわりと涙が溢れてきて、顔を俯かせた時。風を切るような音がした直後、私の帽子が忽然と姿を消していた。



 

「な、なに?」

 



何が起きたのか全く分からなかった。恐る恐る左を見ると、木に突き刺さるナイフの下で、帽子がぶらんと垂れ下がっている。



――今、頭を狙われた?



辺りをきょろきょろと見回しても、何も分からない。ドッと冷や汗が溢れ、背筋に冷たい戦慄が走る。

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