第10話
逃げるといっても、この辺で身を隠せる場所なんて知らないから、とにかく距離を稼ぐことにした。
とりあえず、最寄りの駅に来た特急列車に飛び乗っておく。
……身を縮こませながら電車に揺られること1時間。終点の駅に到着する。電車の中で襲われるなんてことはなかったので、私はほっと息をついた。
そこは都内からもほど近い温泉街だった。駅のホームにはキャリーケースを転がすグループや海外から来たらしいバックパッカーたちで賑わっていた。
成り行きでここに来たけれど、観光客のフリをしておけば追っ手を撒くこともできるかもしれない。
姉が用意してくれた財布にはかなりの枚数のお札が入っていたので、ありがたく使わせてもらうことにする。駅員さんにごめんなさいと謝りつつ、特急券代をそのお金で支払って改札を出た。
外は夜中近い時間だからかお土産屋さんは軒並み閉まっていて、道なりに並ぶ街灯が弱々しく光っている。
「え!?バスないじゃん!」
バスの時刻表を見ると、最終便はとっくに出てしまっていた。
私はがっくりと肩を落とす。
……いつまでもここに留まっておくわけにはいかない。
私は比較的大きな道を歩きながら、安い宿を見つけてそこに隠れることにした。
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