第32話

中庭の方から聞こえてくる蝉の声。


肌に張り付くシャツが少し気持ち悪く感じる。


自販機の横に設置されている青色のベンチに腰掛けた。


ボトルの表面には水滴がついていて、指でなぞると流れ落ちて地面に落ちていく。



ギシッとベンチが揺れて横を見ると、隣に腰を下ろす芹沢くんがいてドキッと胸が高鳴る。


立っていた時もそうだけど私よりも体が大きい。


座っていても見上げなくちゃいけない。




「……あつ、」




パタパタとシャツの胸元を掴んで扇ぐ。


首筋がかなりエロいということは黙っていよう。




「あいつら、うるさいな、ほんと」


「でも芹沢くん、楽しそうな顔してる」


「…あー、多分同じクラスになって浮かれてる。あいつらとは中学の時から一緒にいるから」


「そうなんだ」




友達を見る無邪気な横顔に私まで嬉しくなる。


この短時間で芹沢くんのことを少しずつだけど知ることが出来た。


勇気を出して声をかけて良かった。



多分、恋は待ってちゃダメ。


自分からいかないと何も起こらない。

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