第30話

「あ、やっと来た、崇音」


「さっきの子も一緒?」


「あぁ」




自販機の近くでお喋りをしていたその人達は私達に気がつくと、話すのをやめて手を振る。


まだその手には飲み物はなく、芹沢くんが来るのを待っていたらしい。




「じゃあ、いつも通りじゃんけんね」


「思うけどなんで毎回自販機で飲み物買う時、これなわけ?」


「そりゃあ面白いからに決まってんじゃん」


「マジで勝つ!!」




男子のノリが始まり、置いてけぼりになった私はわちゃわちゃしている会話を聞きながら財布から小銭を取り出す。


普段から水筒を持ってきてるんだけど、暑くて全部飲み干してしまった。だから、小さいボトルで良いから何か飲みたい。




「最初はグー」




夏の暑さにも負けない元気な声が辺りに響く。




「じゃんけん、ポン!!」




そして、勝負がついた途端、歓喜の叫び声が私の鼓膜を破りそうなくらいに轟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る