第29話

「すげえ大人しいけど」


「……緊張してて」


「俺に緊張?」




なんで、と聞かれてもあなたのことが気になってるとは言えない。




「階段から落ちた時の方が元気だったな」


「あの時のことは忘れて!!めちゃくちゃ恥ずかしかったから!」


「あんな衝撃的な出会い方したら忘れる方が無理だろ」




それは良いことじゃないような気がする。


というか、あんな出会い方だったから名前覚えられてた!?


なんかそれは複雑だな。




「私にもちゃんと良いところあるから、ドジなとこよりもそこを見て欲しい」


「じゃあこれから良いとこ見せてくれるってこと?」


「うんっ!」




そしてあわよくば好きになってもらいたい。


そんな思いも込めて大きく頷いた。

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