聖女の失敗 3
エルネストの視察は問題なく進み、この日は平原、湖、海岸の街を訪れた。
どの土地でも魔物の攻撃に困っていたり、魔物に畑を荒らされて収益を得られない等…魔物に困っているようだ。
やはり魔物の凶暴化と攻撃…厄災が迫ってるのが原因か…
世界の至るところにいる勇者と呼ばれる者や冒険者達が頑張ってくれてるそうだが…魔物の方が数が多い。
勇者頼みではなく、国自体が戦力を上げなくてはいけない…
幸い、土地の住民には被害が出ておらず、冒険者が対処してくれてるおかげが命が奪われる事は起きてないそうだ。
命の代わりに被害が多く収入が減ってるとの事…
1日で3ヵ所も行ったので流石にクタクタ…彼女だけだなくエルネストとヨシュアもだ。
その後、初日と同じ宿屋を訪れて身体を休めた。
最初の頃と違い、エルネストはユリアスを見て話してくれる。更に同志だった、同じ考えを持ち、同じ事を願う者…
しかし友人とは言えない、仕事仲間…知人に過ぎないか。
性格は丸くはなったが、時々毒を吐くので…完全に信頼はされてない。こちらも信用を得るのは難しそうだ。
☆★☆★☆
そして…3週間後…
皇城にて
とうとう神殿跡地の調査が終了した。
明日には城を出ると最高神官とイルベタス、アルベリクの話していた。
この日が最後の滞在…エリスの瞳から光が完全に消えていた。
自分を称えていた声が今では煩くて仕方がない…
でも皇太子妃は諦めたくない。
この日の夜…事件は起きた。
ーーーー
アルベリクは自室でダン達が持ってきた報告書を読んでいた。
内容はベルティナ王国の第二王子が話していた写真家と娼婦について。
簡単に捕まえる事ができ、全て吐かせる事も出来たとの事だった。
写真家は本当に探偵経験があったが、儲けられず写真家に転職。捏造する技術は持ってないようだ
黒髪の娼婦は、顔に蛇の鱗のメイクをして仕事をこなせば大金をやるとフィリスタル王国の人間に言われたそうだ。
彼女は顔に鱗のメイクをした状態で商売をしていただけ、全て写真家に撮らせると言われたが、慣れてたから気にせず承諾。
だからいかがわしい写真があったのだ。
要するに、ユリアスに扮してアレコレしろとは指示されてない。
顔に鱗のメイクをした黒髪の娼婦の商売を外で撮っていただけ…娼婦を撮影していただけなのだ。
彼らは話と違うと雇い主に怒っていたが、肝心の雇い主は姿を消し、逃げられてしまったとの事。
しかし娼婦の証言によりフィリスタル王国の人間なのは確定と…
後は第二王子に偽りの情報を伝えて脅してこいと指示するだけ…
撮影を悪用された娼婦と写真家…一応被害者だろう
フィリスタル王国の人間は間違いなくミアの手先だ。
ミアがやったのは第二王子への指示のみ…しかし手紙に細工をして証拠隠滅…証拠が無いので問い詰められない。
ケイオスに結果を牢屋にいる第二王子に伝えるよう頼み、自身は入浴をした。
…そこまでは良かった。
入浴を終え、寝室に入って横になった時だった。突如…部屋が甘ったるい匂いに包まれた。
このような手口は何度か経験してる…しかし今回のはあまりにも強すぎる…
部屋に居ない間に何者かに催淫効果を持つお香を仕掛けられたようだ。
慣れてるとは言え最悪だ…
身動きが取れなくなる前に中に潜って耐えようとした。
その時だった…
「貴方が…あなたが悪いのですよ…」
「!!」
怒りと憎しみを感じ取れる声を発して現れたエリス… いつもの白い衣服を着て…短剣を持っていた。
お香を彼の動きを封じる為だけに使ってるとは思えない…
エリスは公爵令嬢であり聖女、エルネストの発言によると護身術…それなりに体術を身に付けてる女性だ。
アルベリクが抵抗しても対応が出来る…
つまり…無理矢理でも結果を作ろうとしてるのだ…
…そんな彼女は一瞬で動けぬアルベリクを無理矢理抑え込み、短剣を首に当てて口を開いた。
「ワタシはずっと貴方の横に並ぶ為に全てを尽くしてきた。
でも、アルベリク様はワタシを見てくれない。あの王女様も見てない…一体何処の誰を追いかけてるのですか…」
「な、何の事だ…」
「嘘をついても無駄ですよ…貴方は現実を見てない…だから、ワタシが目を覚ましてあげますからね…動かないでください。全て…ワタシに任せてください…」
「やめろっ…」
「動かないでください、ちょっとの力でも斬れる程刃が良すぎる短剣なので…気を付けてください」
「っ!!」
エリスは短剣を彼の首のすぐ横目掛けてベットに刺した。
ギリギリ当たっていないが…これはマズイ。
両手が空いたエリスはアルベリクの衣服に手をかけたのだった…
その後…気を失ったアルベリクに触れ、満面の笑みを浮かべるエリスの姿が…満足したのか…怪しく嗤う声が部屋中に響いたのだった。
☆★☆★☆
更に…2週間後過ぎた…視察を始めて1ヵ月が過ぎた。
宿屋にて
この日は雨、移動が出来ないので宿屋で過ごしていた。
「しばらくは雨が続くみたいだ。1週間は宿屋で待機だね」
「仕方がないですよ…梅雨の時期ですよ。各地で土砂崩れが起きてるとか、指定の道が通れない等の報告は無いので、視察は続けられます」
「そう、じゃあ今の内に父上への報告書を書いちゃおう…ん?ジョシュアか?」
「兄?…どうしたんだ?」
突然、ヨシュアの隣に…青い顔をしたジョシュアが現れた。
床に倒れるように項垂れ…力無く口を開いた。
よく見るとボロボロだ…何か有ったのだろうか…
「…じょ…ベ…」
「えっ?」
「王女を呼べ…」
「ユリアス王女様を?…わかりました。自分が呼んできます」
「頼んだよ、ジョシュア…ソファーに座ってくれ。君は休め…色々酷いよ」
「悪いな皇子様…でも休む訳にもいかないんだ…」
「…話が終わり次第寝るんだ」
「あぁ…」
ヨシュアがユリアスを呼んできた。青いリボンを着けたシルヴァは不安そうな表情をしながら会話を聞いていた。
…ジョシュアの口から…とんでもない情報が出た。
「っ!…そんな」
「……そっか…聖女エリスが…」
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