第28話

運ばれた病院先で

アカネがされたことは

死亡確認だけだった。


医師達が

病室を去っていく中、


僕は

静かに横たわる

アカネの隣に立ちつくした。



しっかりと

瞑られた目は


今にも開いて

僕を見つめそうに見え、


口は


今にも僕の名前を

呼んでくれそうに見えた。



「アカネ?」



やはり返事はない。


投げ出された手を

そっと握ってみる。



彼女は冷え症で

いつも手と足は冷たかった。


今日も

いつものように冷たい。



けれど、


あの柔らかな感触も、


握り返してくるぬくもりも


今は感じられなかった。



「…目をあけてくれよ、



頼むから……」



アカネは本当に

眠っているようだった。

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