第27話

「…アカネ?」


返事はない。



「アカネ!おい!」


体を揺すってみても、

やはり返事はない。


と、彼女の手が

ベッドから力なくだらりと

足り下がった。


体中から

血の気が引いていく。


あまりに突然の事に

僕は事態が

把握できなかった。



いや、

分かっていたのかもしれない。



それでも

まだ間に合う気がしている。


アカネは今の今まで

生きていたのだから。



だから、こんなにも

あっけなく逝くはずはないと、


何度も

自分に言い聞かせる。



僕は携帯電話の

電源を入れ、


119番に電話をした。


その時の僕は

自分でも恐ろしいほどに

冷静だった。




時間は19時20分。


まだ夜が

始まったばかりだ。



彼女は

まだ大丈夫、大丈夫。


それから数分後に、

アカネはやってきた

救急隊員によって


病院に運ばれた。

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