第26話

何か夢を見ていた。


起きた瞬間に

忘れてしまったが、


楽しい夢だったような

気がする。


外はすっかり暗くて、

僕は慌てて起き上がった。


そうだ、時計は

全て隠してしまった。


けれど

外の暗さだけは

隠しきれなかった。


隣に眠る

アカネに目を向けた。


彼女は

まだ眠っている。


腕を抜き、立ちあがって

テーブルの上に

置かれたままのコーヒーを

ひと口飲んでみたが


すっかり冷めていて

ただ苦いだけの

不快な味がした。


しかたなく二つとも

片づけて、

新しく豆を挽いた。


湯がわくのを

待っている間に、


もう一度

ベッドに眠る彼女の隣に

腰を落とした。




静かに眠っている。


さっきまで聞こえていた

寝息も消え、


まるで人形が

横たわっているようだった。


僕はさっきと同じように


そっと

彼女髪をかきあげた。


かすれて触れた

彼女の頬の冷たさに、



僕は手を止めた。

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