第9話

そして後ろを

振り返った途端、


彼女はキャー!と

歓声をあげた。



彼女の枕元には、


大きなクマのぬいぐるみが

置かれていたのだ。


もちろん

僕の仕業だった。


クリスマスイブだけ

24時間営業している

近所のおもちゃ屋に


夜中にそっと抜け出して

買いに行ったのだ。


自分がサンタに

なったのは初めてだった。


それがこんなに

気持ちの良いものだった

なんて知らなかった。


アカネは昨日

散々泣き腫らした目から、


またポロポロと

涙を流している。


それが可笑しくて、

可愛くて、

愛しくて、


どうしようもなくなった

僕は


彼女を

思い切り抱きしめた。


「ありがとう」


と彼女が言った。


「俺じゃないよ。

サンタがきたんじゃないか?


クリスマスだったら」


白々しい嘘に

彼女はクスクスと

笑っていたけれど、


僕は今までで

一番幸せなクリスマスに

感謝していた。

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