第26話
「み、帝になどと、簡単には許されることではない!さあ帰った帰った!!」
無理やり俺を追い払おうとする仕草を見て、想定内だと思ってにやりと笑う。
「じゃあ、会わずとも、伝えてくれればいい。それ位ならいいでしょ?面白い話なんだ。」
俺は帝の前に姿を見せないから。
「・・・申してみろ。」
やっぱり商人。
面白い話には、飛び付いてきた。
そっとその耳に向かって手を伸ばす。
唇を名和長年の耳に近づけて、小さく呟いた。
「元弘三年、五月二十二日、つまり今日、鎌倉殿は崩壊したよ。北条高時が自刃したんだ。」
名和長年は、目を見張った。
ただ一点を見つめて、俺の言ったことを考えている。
それを見て、笑っていた。
知らぬ間に。
「全て背負って、死んでくれた。」
高時。
ひやりとしたこともあったけれど、高時は最後の最後で俺に力を貸してくれる。
俺を助けてくれる。
もう、この世にいないと思うと少し寂しいけれど。
「そ・・・れはどういう・・・。」
名和長年は瞳を揺らしながら俺を見る。
「言葉の通りだよ。鎌倉の東勝寺って言う北条氏の菩提寺で、火を放って自害して死んだ。鎌倉殿は滅亡した。」
東勝寺は、現代には残ってはいないけれど。
「一族郎党、270人と一緒に、ね。」
これを『見事な最期』と言わずに、何て言うのだろう。
高時。
高時は、間違いなく名君だったよ。
新しく広がる国のことを思えば、最高の最期だったと思う。
全て背負って、後腐れなく。
敗者が勝者が作る世界を脅かさないように、全て背負って逝ってくれた。
武士らしい、最期。
望んでいたこと、最期の最期で叶ったんだと思ってあげたい。
傲慢かも、しれないけれど。
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