第7話

「・・・余計なものを、見る必要はないよ。」






真白くんはそれだけ言って、すっと離れてまた元の位置に座る。



その動きで風が起こって、頬をそっと撫でるから寒いと思う。





世界は薄っすら熱を湛えているのに、寒い、と。






「六波羅探題が崩壊して、京が戦場になったんだ。しょうがないよ。」




「・・・そうね。」




頬に笑顔が張り付いて痛い。






「実質的に二日くらいの戦闘だったけど、足利軍は鎌倉殿の中でも最強の家臣団を編成していた。そいつらが寝返ったんだ。容赦なかっただろうね。」






それを聞いて、現実に引き戻される。



足利家。


最強の家臣団。






「それをまとめてるのは大和だよ。」







反射的に、目を見張った。



それを、まとめているのは、大和。





足利家は寝返ったはずだから、宮家の皇子の側室の私にとっては味方なはずなのに、





敵なのか、味方なのか、よくわからない。







大和は、私にとってどちらなのか・・・。







「・・・ま、しろくんは・・・。」




唇からボロボロと言葉が落ちた。



考えるよりも先に、言葉が。






「真白くんは・・・京で、大和に・・・会った?」







ここで、大和に会ったのかしら?



一瞬で、緊張の糸が張り巡らされる。





息をするだけで、その糸で切り刻まれそうなくらい緊迫する。



ほんの少し、真白くんは眉を歪めた。






その動きを見て、あ、と思う。







「・・・会ってないよ。」





唇が、静かに動いてそんな言葉を紡ぎ出す。




嘘。



絶対に、嘘。






ほんの少しの眉の動きで、嘘だと気付く。

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