芽生え

第33話

■■■■







「・・・礼なんか言わないよ。」




「別に言ってほしくもないし。」






馬から降りて、沢の水を飲ませる。



俺と真白も、近くの岩に腰かけて一息吐いた。


追手はうまいことまけたみたいだ。






「あの人大丈夫なのかよ。」






真白にそう尋ねると、真白は俺を一度ギロリと睨みつけた。




「大丈夫。法師様はヤワじゃないし。」




「そうかよ。」




こいついちいち噛みついてくるな。


なぜかこいつには負けられないと強く思ってしまう。





「ねえ。」



呼ばれて、顔を上げる。





「お前って何者?」





真白はじっと俺を見た。




「その垂れ目、見てるだけで腹が立つんだよね。」




そう言われてカチンとくる。





「別にそんなに垂れ目じゃないし。別にお前に言われる筋合いはないね。」




「それを言ったら、お前だって俺の顔が女顔だとか言える筋合いはないよ。謝ってよ。」






「やだね。なんで俺が謝るんだよ。俺はお前の命の恩人だって忘れるなよ。」






真白はむっとして口をつぐんだ。





「そういうふてぶてしいとこもそっくりだ。」





呟くように吐き捨てる。


真白は傍にある雑草をブチブチと抜いている。





「誰だよそれ。」





大して興味もなかったけれど、念のため聞いてみる。





「別にお前に言うことじゃないし。」





真白はそう吐き捨てて、そっぽを向く。


一瞬本気でこいつを殴り飛ばしたくなったのは言うまでもない。





「お前、どこから来たの?」




「太一。『お前』って言うのやめろよ。別にお前に言うことじゃないし。」




同じように返すと、真白はムッとしたように眉を歪めた。




「真白。お前こそ、お前お前言わないでよ。」





こ、こいつ!!


衝動で思わずその胸倉を掴む。

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