第27話

はっとして声の主を見る。






思わず、背筋がひやりとした。



ただ、俺を見つめていただけだと言うのに。






血に飢えた、狼。







暑さが嘘みたいに引き、汗が冷える。




なんだこの、異常なまでの圧迫感。


張りつめた空気。





オーラが。





オーラが違う。





凡人の持つそれとは、まるで違う。






整った顔立ちは、まるで一枚の絵画のよう。



冷たい、灰色だ。






静謐でいて、激情。







外と内に、相反するものを持っている。







知らずに一歩下がっていた。



距離を取りたいと思った。


身の危険を感じたからかもしれない。





少しでも傍に寄れば、その牙で喰い殺されそうだ。





それくらい、鋭い。






「・・・お前!」







けれどその張りつめたオーラは、その言葉と共に一気に砕け散った。






思わず驚いて目を見張る。




同じようにその男も目を見張って俺を上から下まで見回す。





口を開けて、間抜けに。





思わず俺が戸惑った。

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