第8話

「笑うな東湖!今のは油断しただけだ!お前こそ何者だっ!!」






ガバリとその人が勢いよく立ちあがった。


その瞬間、その人の頭上にかざしていた私の杖に、頭がゴンっとものすごい音を立てて当たった。






そしてそのまま今度はその人は後ろ向きにバタリと倒れた。







沈黙が広がる。







「ぎゃははははっ!!!貴方バカですね!!!日本一のバカっ!!バカ左虎っ!!」






沈黙を破るように、東湖さんがのたうちまわりながら、そう叫んで笑い転げる。




この人も、さっきまですました顔をしてたのに思いきり大笑いしている。





多分こっちが素なんだろう。






「お前何者だっ!!どんな術を使ったんだ!!もしやもしや忍か?!」





倒れていたその人は、ガバリと起き上ってそう言った。





キラキラと、感動を湛えて私を見つめる。



どんな術とか忍とか・・・。






ああ、この人本気でバカなんだ。





自分から当たってったじゃないの。







「・・・東湖さん。」



振り返って、にーっこり笑う。





「早く行きましょ、河内へ。」





東湖さんは崩した顔を元に戻してすまして笑った。





「ええ。参りましょう、月子殿。河内はとてもよいところなのですよ?何より、貴女のような美女がわんさかいるのです。」




「ちょっと待て!俺にも教えろその術っ!!忍法ほにゃららの術っ!」




「ええ、ええ、わかってますとも、特に貴女は私の出会った五万の美女の内でも一番の美女!どうですか?今宵は私と共に一夜を・・・」




「なあ、どうやんだよ!お前、くのいちだろ!くのいち!お色気攻撃とかあんの?!」





2人に構わず歩き出す。






河内まであともうひと踏ん張り。





そんな道中はエロとバカのサンドイッチだった。

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