第5話

「もうすぐ河内です。御迎えに上がりました。」





私と楠木さんを交互に見て、そう言った。



その言葉に、はっとする。





河内。





もうすぐ、河内。






ようやく、この緑から逃げ切ることができるんだと思ったら、嬉しくてたまらなくなった。





「ありがとさん。東湖。お前は月子を連れて、屋敷に戻っていろ。」




「はっ。殿はどちらに?」



「俺か?俺はこのまま千剣破城まで行くんさ。」




「承知しました。では月子殿。私と共に。」





すっと肩を押されて私は正成さんと別の方向へ足を向けられる。




「えっ?!ま、待ってっ!ま、・・・しょ、正吉さん!!」





声を上げると、さっさと歩きだしていた正成さんは振り向いて笑った。




「案ずるな、東湖は俺の信頼する部下の一人。悪いようにはせんよ。」





悪いようにはせんって、そんな突然!!





「あ、貴方もっ!!いいの?!主人が一人でって危なくないの?!」



「いつものことです。単独行動が性に合っていますので。」




い、いつものことって!!




確かにいつもお供なんて付けずにあの人ふらふら十津川に来てたけど!

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