第33話
灰白の着物が彼を包む。
「腰紐」
短く言われてぎょっとする。
傍に落ちていた紺の紐を捕まえて、彼に差し出す。
「結ぶのだ」
むっ結ぶ?!
「無理!結び方わからないもの!」
「適当でよい。早く」
促されて、適当に結ぶ。
腰に腕を回して、抱きつくようになってまた恥ずかしくなる。
「これでは駄目だ。すぐに解けてしまう」
むっとしたように眉を歪めて、彼は私がせっかく結んだものを解いてまた結び直す。
「次」
「は?」
「次を着せてくれ」
なんで私が?!!!
そう思ったけれど、抗えない。
「紐も今さっき見せたように結ぶのだ」
なんなのこの人?!
と、叫んで怒り出したくなったけれど、生まれてこの方、人の世話をして生きてきたようなものだから、言われるがままにやってしまう自分が悲しい。
時間はとてつもなくかかったけれど、何とか彼は昨日初めて会った時のような服装になった。
「ふむ・・・」
彼は突っ立って何か考えている。
何だかめちゃくちゃ疲れた私は、彼の足元でゴミのように転がっている。
もう人目を気にしていられないくらい疲れた。
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