第31話

「足。なんて女だ。お前は」





嘘おおおおっっ!と心の中で叫びながら、足を外す。




顔が一瞬で火照ったのがわかった。





「なっな、なななんで、起こさないのよ!!!」





ぎゃあああ!と叫びながら、上にかかっていた黒い着物を奪って後ずさりする。






「少し考え事をしていたのだ」






そう言いながら立ち上がる。




「え?」




立ち上がったと思ったら、着ていた白い着物をばさばさと脱いでいく。




「あっあ!貴方っ!!」




も、もしや昨日の夜の続き?!!!


嘘でしょ?!!






「着替える。着せろ」





目を白黒させていると、彼は短く言って、指を差す。


その先に荷物があった。



思わず身構えた自分が恥ずかしい。



着せろって、この人何様のつもりよ!と思ったが、抗うこともできずにその荷物を解く。





「これでいいの?」




少し灰色がかった、白い着物。



綺麗。




「それでいい」


「これって何色?」






「灰白」






はいじろ。




そんな色の名前、聞いたことがない。




みんな『灰色』でひとくくりにしていたけれど、そんな美しい名前があるなんて知らなかった。





昨日の夜、月光に反射したこの人の瞳に灯った光と同じ色。





灰白。

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