第29話
「・・・言っていることは、真実なのか?」
頷く。
「私が今着ている服が普段着。私が住んでいたのは『東京』。西暦2007年。平成19年。」
信じて。
お願いだから、信じてほしい。
「せいれき2007年?なんだそれは。へいせい19年?なんだそれは。東京?そのような地名聞いたことがない。それに・・・」
彼は私の制服をじろじろと見つめる。
「お前の国の女はみなこうやって足を出しているのか?」
どこを見ているのよ!と突っ込みそうになったが、ぐっと堪える。
「・・・そうよ。さっき貴方がおかしなことを言っていたけれど、家に被害がなんて、よっぽどのことをしなきゃありえないし」
「・・・そうか」
小さく頷いて、目を閉じてしまった。
そうしてしばらく考え込んでいたが、彼は音もなく瞳を開いた。
「私がお前を呼んだことは断じてないと言えるが、確かにお前は妙だ。おかしい」
「呼んだかどうかはどうでもいいから、帰す方法だけ教えてよ!」
「そんな事、私がわかるわけがないだろう。呼んでもないのに、帰す方法を知っているなど、おかしな話しだ」
彼ははっきり言った。
その目は真剣。
嘘なんて、吐いていない。
ああ。
絶望が、涙へと姿を変える。
「すまぬな」
その手が、そろそろと私の髪を撫でる。
この手。
「泣くな、ヒナ」
この声。
確かに、この人なのに。
どうしたら帰れるのか、何もわからない。
唯一の希望も、もう闇の中。
一体、私はこれからどうしたらいいのだろうか。
ああ、もう、希望も何も見出せない。
強引に抱き寄せられて、その腕の中に沈む。
「抱かないと約束する。きっと疲れている。もう、寝るのだ」
悪い夢であってほしい。
目が覚めたら、いつもどおりの一日が始まるはず。
きっと。
そして、バカな夢を見たと笑うんだ。
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