第31話

「今日見に来てる人、多いね?」


「まあ、1年が部活見学しに来てるんだろ」


「3年生の先輩たちは、今日はいないの?」


「今日は模試らしい。だから、逆に2年だけで練習試合できるんだよ」


「なるほど~」




陸は去年の冬から、既にレギュラーになっていた。



すごいね、って言ったら、うちの先輩たちは目立ちたがり屋が多くて、みんなフォワード志望だからだよ、って謙遜してたけど。



ボランチというポジションで、誰よりも走って、攻撃と守備の要になっている陸は、派手なプレーは無くても、凄く輝いているし、誇らしい。




少し日焼けした横顔は、昔の面影を大きく残すくせに、酷く大人びていて。



美味しいお弁当で食欲を満たし、春らしい日差しを浴びて、うー!と気持ちよさそうに身体を伸ばして、寝転んだ。




「あーやべえ、眠くなってきたかも」


「え、そろそろ集合なんじゃない?」


「ちょっとアップして試合だな」


「寝ちゃダメでしょ」


「紗葉も寝よーぜ」


「いや、陸が起きて」




確かにここは日差しも風も気持ちいいけれど。


ごろん、寝そべって、長い手足を伸ばしている陸は、本当に寝てしまいそう。

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