第29話
「お前どんだけ急いできたの、お弁当崩れちゃってる」
「ええ、すっごい美味しそうに作ってくれたのに」
陸と私の間に広げられた、お母さんの手づくり弁当は、ひたすらに美味しそうな彩りは変わっていないものの、可愛らしい盛り付けは跡形も無くなっていた。
「ま、まあ、胃に入っちゃえば一緒だから…」
「おい。でも、おばさんのお弁当はほんと美味いよな」
見た目は悪くなっても、味は変わらない。食欲を誘うように、少しだけ茶色い焦げ目がつけられた、ふわふわで甘い卵焼きを頬張りながら、幸せそうな表情を見せる陸。
お母さんの玉子焼きは、陸の大好物のひとつだ。
もぐもぐと、食べやすい大きさに握られたおにぎりを食べながら、陸は目をまんまるにして、はっと思い出したかのようにこちらを向いた。
「そいえば、紗葉はもう弁当作りはやめたの?」
「うーん、お母さんのお弁当のが美味しいからなあ」
「そうか?紗葉のも美味しかったけどな」
「ほんと?卵焼き焦がしちゃったじゃん、私」
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