第28話

だけど、いつも同じパターンでも、楽しそうにけらけらと笑ってる陸は、きっと、【子供の頃から変わらない私】の相手をするのが、そんなに嫌いではないのだろう。




好きな人が、嫌だと思ってないのなら、このままでいっか…?


何度も同じ問いを繰り返して、そしていつもこの答えに至ってしまって。変わるきっかけを得られずに、今に至る。




「ちゃんとお弁当預かってきてくれたんだな」


「うん、お待たせです。食べよっか」




ちらり、バスケットに視線を向けた陸は、それを持ってくれる。




「あ、ありがとう」


「重かっただろ、ありがとな。体育館のとこ、多分座れるから。行こ」




久しぶりにじっと見つめた陸の背中は、想像していたよりもずっとずっと広くて、大きくて、このまま私に背を向けて、どこかに行ってしまいそうな、焦り、を感じた。



体育館の入り口の階段を椅子みたいに利用して、私と陸は少し離れて隣同士に座り、間にお母さんの作ってくれたお弁当を広げる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る