第25話

「準備、ってなにすればいいんだろう?」




とりあえず制服を着て、バッグに、財布、携帯、タオルと水筒、そして陸がいつも試合後に食べているグミを詰める。



試合は午後からだけど、もうきっと、陸は高校に着いて、練習してるだろうな。


昔からそうだった。


試合の日には、誰よりも早く起きて、誰よりも早く練習を始めてる。



中学生の時、今日みたいに陸の試合を見に行くというとき、陸よりも早く起きようとチャレンジしたことがある。



頑張って早起きをしたんだけど、もうその時間には陸は既に学校で練習をしてることが分かって。



それ以来、大人しく諦めちゃったから、未だに試合の日、陸は何時に起きてるのか知らないままだ。




「紗葉ー、そろそろお母さんたち出発するわよ~」




1階から階段を吹き抜け、2階の私の部屋までお母さんの声が聞こえる。階段から下を覗くと、つばの大きな帽子を被ったお母さんが、一生懸命に上を見上げていた。

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