第29話

言葉に詰まる。重力に逆らうように顔に熱が集まる。何度か瞬きをして、私は俯いた。ふう、と息を吐いて。




「わ、私!まだ高校生だよ…?」


「関係ない」


「"女"っていうより"女子"だし。それに…」




必死に取り繕う私。早口になってるのは分かってる。でもここでは止められない。




「そういう反応とか、ほんと俺の好みだから」


「っ、もー、からかわないで」




もう駄目だ。隠せない、この顔の赤さは。食事中なのに、ダイニングテーブルに肘をつき、顔を掌で隠す。




「俺に勝とうとか100年早いんだけど」


「勝てる気しないもん」


「ほら、花姫になれる気がしてきただろ?俺がそう言ってるんだから、異論は認めない」




――――…コウくんの優しさは、ときどきわかりづらい。



私がコウくんに適わないことを思い知らせて、その後で、 "異論は認めない"なんて。私にとって最高の励ましだ。




「ありがとう。私、頑張ってみる」


「今更頑張っても変わらないけどな」


「うん、でも頑張ってみたいの。今までおこがましくて、誰にも言えなかったけど」




私なんて花姫にはなれない、って諦めていた。

瑛茗の女子学生にとって、花姫は憧れで、目指すこともおこがましいと思っていた。




でも、コウくんが応援してくれるなら頑張れる気がする。




なんだかコウくんに操られているような自分が悔しくて、さっき諦めたのにリベンジしたい気持ちが芽生える。

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