第28話
『生徒の投票で選ばれる』ということ。それは、瑛茗大付属であるがために、『《育ちの良い》生徒たちの間で投票された《選ばれし女性》』というイメージが付きまとう。
花姫の称号は、証明書のようなもので。容姿や作法の優美さなど、上流階級の女性に求められる条件が満たされているという証拠となって。
そして、その証拠はそのまま自分のステータスとなる。この世界では、何にも劣らない自分の価値に。
毎年、瑛茗祭のあとには、どこのパーティーでも花姫のことが話題に登るほどの注目度。つまり、どこまでもシンプルな称号は、どこまでも重い意味を持つ。
《伝統と美人は脈々と受け継いでいくものだ》という創始者のセクハラまがいの言葉が受け継がれていて。ひとりが何度も受賞することのないよう、対象となるのは3年生のみ。
花姫になるために、1年生のときから所謂ロビー活動をする人もいるような、瑛茗生ならば誰でも欲する称号。
「大丈夫だよ、紫花より花姫にふさわしい奴なんていない」
「そんなことないよ、沢山いる」
「いたら連れて来いよ」
家柄、容姿も作法も、全て揃っている人だって沢山いるのに、コウくんは全くぶれずに私を信じてくれる。あっけらかんとした言葉につい笑ってしまった。
「なんでそんなに自信ありげなの」
「紫花は俺が俺好みに育てたから」
言葉に詰まった私を意地悪な瞳で包み込んで、ドキドキするような台詞を真っ赤な唇から吐き出す。
「容姿も所作も、全部引っくるめて。俺はお前より気高くてイイ女に出会ったことないよ」
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