第27話

「うん、明日ロングホームルームあるみたい。そこで話し合うのかな多分」


「10月の初めだよな。出張被ってないといいけど」


「来てくれるの?」


「日本にいたらな」




桐谷の商社に入社して4年目。語学がもともとかなり堪能なコウくんは入社したときからとても期待されていたけれど。



4年目ということで、経験といういちばん大切でいちばん足りなかったものも手に入れたコウくん。



仕事を完璧にこなすようになり、桐谷の跡取りとして期待する声も大きくなっていると聞く。




「嘘だよ」


「え?」




コウくんは悪戯な笑みを浮かべて私を見る。私にとっては大人の象徴のようなワインの入ったグラスを優雅に傾けたあと。




「休みとってある。瑛茗祭の日」


「うそ…」


「ほんと。親父が見に行こう、って。あいつ理事だしな」




驚いて言葉が出ない私を愉しげに眺めたコウくんは、またグラスを傾けた。あかい唇に、あかいワインが流れ込む。




「紫花が花姫(はなひめ)に選ばれる、ってウキウキしてたよ」


「いや、花姫は他の人じゃないかな?」




大抵、ミスコンなどにはお笑い要素が含まれてしまう。


一般の方たちの投票のほうが圧倒的に多いから、自分をアピールできた人たちがグランプリを獲るけれど。




花姫は、生徒の中だけでの投票で決まる、どこまでもシンプルな称号。毎年、瑛茗祭でわざわざ時間を割いて花姫は発表される。

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