第7話
両親は私が生まれてすぐに、交通事故で亡くなってしまっていて。私は赤ちゃんの頃からずっと、おばあちゃんに育ててもらった。
でもそのおばあちゃんは、私が10歳のときに、突然遠くへ行ってしまったのだ。
その当日も私が学校へ行くのを見送ってから、自分も桐谷の家に行って、そしてそこで倒れたらしい。
いくら元気なおばあちゃんでも老いには勝てなくて、そのまま永遠に私の前からいなくなってしまった。
とてもしっかりしていたおばあちゃんは、私のためのお金を残し、そして親戚に自分がいなくなったあとの私の養育をお願いしておいてくれていて。
私はドラマのような展開にならずに、ただただ穏便に、親切な遠方の親戚に引き取られるはずだったのだ。
◇
どこまでも用意周到なおばあちゃんが生前に自分でセッティングしていたらしい葬儀を終えて、小さな木箱に入ってしまったあとに、親戚のおばさんたちとお話しているとき。
「失礼します」
小さな和室の襖を開けて入ってきたのは、それまで見たことのないほどに綺麗な男の人だった。
真っ白のタキシードを着ている訳でもでも白馬に乗っている訳でもないけれど。でも純粋に、嗚呼王子様だ、と思ったのを今でも覚えている。
真っ黒の喪服姿には隙がなく、未だにおばあちゃんの死を信じることができなかった私には、現実逃避をすることができる絶好の相手だった。
私は現実から目を背けたかった。おばあちゃんの死は、親戚がいてもなお、私に孤独という感情を与えたから。
両親もいない私には、ずっとふたりで過ごしてきたおばあちゃんが何よりも大切な存在だったのだ。だからこそ、泣けずにいた。
綺麗な男の人の、その後ろからもうひとりの大人の男性が現れて。私を引き取るはずだった親戚と話し始めている。
この人たちは、誰なのかなあ?
そう幼心に疑問に思った記憶がある。
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