第6話

特に家柄が受験基準になっているわけではないけれど、初等部からのエスカレーターの私立だし、まあ確かにお金持ちがとても多い。




例に漏れず、隣で歩く親友も誰でも知っている大企業の重役の御令嬢。明らかにお嬢様!のテンプレートの派手な顔立ちにヘアスタイル。




その中で私はやはり異質な存在だ。高貴な家柄でも、かなりのお金持ちでもない。ただ、あの桐谷家に養育されているというだけ。




桐谷家は、その商才でどんな時代も存続してきた由緒正しき家柄。私と一緒に住んでいるコウくんはそこの所謂御曹司。




10歳のとき、初めてコウくんを見たときに王子様だと思った。その直感は間違っていなかったのだ。コウくんは、本当に王子様だったから。




コウくんのひいひいおじいちゃんと、私のひいひいおばあちゃんは兄妹だった。つまり、私とコウくんは遠い遠い親戚。



結婚も自由に出来ない時代。私のひいひいおばあちゃんは、桐谷の家を捨てて大好きな人と駆け落ちをしたらしい。




そして、コウくんのひいひいおじいちゃんは桐谷の家を継ぎ、長い時間が流れてコウくんや私が生まれた。




普通であれば、私とコウくんの間には関わりはないだろう。しかし、数十年前のある出来事がきっかけで、また私のお家とコウくんのお家は関わりを持つことになった。




それは、コウくんが生まれるずっと前。お手伝いで雇っていた人が、コウくんのお父様の誘拐に加担しようとしたらしく。



それから、桐谷の家のお手伝いさんは身元がしっかりしている人しか雇われなくなった。




駆け落ちをしたとは言え、桐谷家本家の令嬢の子孫であるおばあちゃんに白羽の矢が立つのは当然で。おばあちゃんはそれから直ぐに桐谷の家でお手伝いを始めたと聞いた。

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