猫又少女の猫耳は俺にしか見えない

@Hisui_51

第1話 借りてきた猫のような二人

 淑嶺院学園、日本随一の高等学校と名高いこの学校のとある教室。一人の少年の力ない声が漏れた。


「ね、猫耳……?」

「……?」


 ありえないものを見るように目を何度もこすりながら、少年は黒板の前に建つ一人の少女を凝視する。

 まあ仕方のない事だろう。なんせ、その少女の頭には彼にしか見えない猫耳がついていたのだから。




 秋、少年こと冬霧 千紘ふゆぎり ちひろはいつも通り朝のがやがやとした教室で本を読んでいた。

 窓から見える通学路の並木には紅葉が色づき始め、つい先月までは暑そうにしていた生徒たちも今ではもう肌寒そうにしていた。

 何気ない日常、何気ない日々。つい二週間前までは千紘だってそんな生活をおくっていたというのに。


「おはよう、冬霧君」

「おはよう、宮猫さん」


 そんな日常は彼女によって壊されることとなった。

 彼女の名前は宮猫 又緋みやねこ ゆうひ。才色兼備、文武両道、まだ転校してきて二週間だというのに、学校中のあこがれの的となった少女だ。

 たまたま席が隣ということもあり、二人は毎朝挨拶をする程度の仲なのだが、千紘はそんな彼女について、一つ大きな悩みを持っていた。


(やっぱり今日もみえるか……)


 千紘は目を擦りながら又緋を見る。

 黒く艶のある髪を肩より少し伸ばし、長いまつ毛に整った目鼻立ち。

 けれど、その頭と腰には、それぞれ猫耳と尻尾がついていた。

 別に又緋がコスプレをしているわけでもなければ、誰からでも見えるものではない。

 なぜか千紘には見えてしまうのだ。又緋に着いた猫耳と尻尾が。


(あんなに冷たくて誰も寄せ付けないオーラ漂わせてるのに中身は普通の女の子なんだよな)


 千紘は本を読みながら、横目に同じく本を読む又緋を見る。

 事実、又緋はただの人見知りであって一人を好んでいるわけではない。

 けれど、寂しさも、うれしさも、一切を顔に出さない又緋は、千紘を除いたクラスメイトに謎に勘違いをされたままであり、尻尾や耳が見える千紘だからこそ、又緋が寂しがっていることもわかれば、挨拶をするたびにうれしく思ってくれているということも知っている。

 

(自信をもって自分を見せればいいのに)


 そう言葉に出すわけでもなく思うだけの千紘も、うまく自分を出せない又緋も、同様に借りてきた猫のようであった。


———

最後までお読みいただきありがとうございます。

初めまして!翡翠です!

ラブコメは初投稿なので見苦しい文章やらあると思います。けれど、物語全体を通して少しでも面白いと思ってもらえたなら、☆と♡よろしくお願いします!

では、これからも『猫又少女の猫耳は俺にしか見えない』をよろしくお願いします!


 






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