第32話
二人は王子の横の通路を前のほうに歩いていく。
ピエも背は高いけど、充くんに比べると低いので何だかマミヤちゃんとの距離が近く感じる。
立ち上がってどこに行ったかを見るわけにもいかないし、あたしは王子にバレないように必死で目だけでその動向を追った。
…無理して横を見ているので眼球が痛い…
焦りはじめたあたしは、膝の上にかかっている毛布をにぎにぎと無意識の間に握っていた。
王子がヘッドフォンを取り、すっとあたしに視線を泳がせる。
「…トイレ?」
「は…やっ!違うよっ」
「…だよな。さっき行ったばっかだもんな」
スッと流す瞳は、何か全てを見透かしているようであたしはますます毛布を握り締める。
少しずつ視線を逸らして、あたしは王子の視線から完全にフェードアウトするように瞳を動かした。
グィッ
「ッ!?」
視線を逸らした瞬間、王子に手を引っ張られ、あたしは驚いて王子を見る。
「ほら、立てよ」
見上げると王子はすでに立ち上がっていて、どこかに行こうとあたしの手を引いた。
「な、なんで!?」
あたしは戸惑ってつい腰が引けてしまう。
もしかして全部見透かされてて、マミヤちゃんとピエのことが気になってるってバレてるとか!?
「あたし全っ然気になってないよ!?」
はわはわと焦りながら一度浮かした腰をもう一度椅子に戻すと、王子が少し真顔になる。
「うそつけ」
少し間を置いて片方だけ口角を上けて、フッと笑うあの仕草。
何か企んでいる。
何か企んでいる!
この顔がお目見えするとあたしの拒否権はなくなってしまう。
あたしは王子に手を引かれ、機内の中を歩いた。
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