第29話

機内の後尾部分は乙女川学園の生徒が占領していて、ワイワイガヤガヤと非常にうるさい。




そんな騒音の中、やっと目が覚めたあたしはもぬけの殻になっている王子の席を見た。




(はれ…?毛布?…王子は、どこ…?)




いつの間にか掛けてあった毛布をあたしはめくる。




「やっとお目覚めですわね、千亜稀ちゃん」




そう言って後ろの席からニュッと顔を出すマミヤちゃんの顔はニヤニヤと怪しい。




「ど、どうしたの…?」




「おほほっ何でもありませんわ。千亜稀ちゃんは本当に幸せ者ですわねー」




ムフフと笑う企み笑顔にあたしはなぜか焦りを覚える。




「マッマミヤちゃんちょっと来て!!!」




この笑顔は曲者だ。




もしかして王子、あたしが寝てる時に何か変なことでもしたんじゃない!?




あたしはマミヤちゃんの手を引っ張って、最後尾にある化粧室へと連れて歩く。




「ちょっ…ちょっと…ッ」




強引に引っ張ったので、マミヤちゃんが席を出る時、通路側に座っていたピエの脚を踏んでしまったらしい。




「ッ!!……?」




ボケッと寝ぼけ眼のピエを置いて、あたしは小走りにマミヤちゃんを引っ張った。

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